前回の続きです。

後輩…募る想い

合宿は順調に過ぎていきました。

私たちのチームは前半の遅れを
少しづつ取り戻し、キャプテンも
段々上機嫌になっていきました。

彼女と私もそれ以降ペアは組みませんでしたが
練習や夕食時などで話していくうちに、
どんどん仲良くなっていきました。

私はどんどん彼女に惹かれていきました。

なぜ根暗な私が可愛い後輩の女の子と仲良く出来たのか?

貴方はここまでお読みになって疑問をもつかもしれません。

大きな理由がありました。

私のチームは上級生男子が
私とキャプテンだけだったのです。

調子に乗る自分。

どういうことか?

キャプテンは終始イラついていました。
ぶっちゃげこの時期の彼は
部活改革に意気込んでいて、
かなり厳しくしていました。

そんなわけで他の部員、
チームのメンバー、
とりわけ後輩の女子たちは
みんなかなり怖がっていました。

それで私がある意味ラッキーなことに
慕われる結果になってしまったのです。

他の女子部員からも
「光太せんぱい~~」
と慕われ、大分調子に乗っていました。

チャラい同級生に喧嘩をウラれました。

当然他の同級生男子は
いい顔をしません。

とゆうか明らかにモテない私が
後輩女子に慕われているのを見て、
信じられない、といった感じでした。

そしてわりとチャラい、ロン毛の
ヘラヘラした同級生が絡んできました。

「和田なんて、ヨエーくせに
 今度の試合でボコボコにしてやる。」

次の試合で私とその絡んできた自称イケメンの
彼とのシングルス・マッチが組まれました。

私は一応中学からの経験者だったので
それなりに部活では実力者でした。

対戦相手の彼は高校からテニスをはじめたので
負ける気がしませんでした。

女の子応援団、緊張、ミスの連続…

しかし、
試合は長引きました。

私がミスばかりしていたからです。

私はとても緊張していて、
つまらないミスを繰り返していました。

理由はひとつ、彼女が見ていたからです。

彼女だけではなく、
他の慕ってくれる後輩部員も見守っていました。

女子も多く見ていました。

自称イケメンの彼よりも、
私の女の子応援団のほうが多くいました。

窓際男子 VS 雰囲気イケメン

観客も面白がって見ているようでした。

試合は辛くも私が勝利しました。
しかし決着は相手の
ダブル・フォルト(つまらないミス)
でした。

私は自陣チームの方に帰っていきました。

キャプテンは予想外に苦戦した私に

「和田、全然ダメだな」
と苦言を言いました。

彼女は励ましてくれましたが
他の後輩女子は

「光太先輩ってやっぱりダサくない?」

と言って段々相手をしてくれなくなりました。

ライバルからの挑戦状…
彼女の前で一年越しの決戦!

合宿も最終日に入りました。

私たちのチームも段々勝利を積み重ね、
最後の試合で勝てば優勝出来る所まで来ました。

最後の対戦相手は
今の2年生エースがいるチームでした。

その彼と私は一年前、合宿初日に対戦していました。

その時私がまだ荒削りだった彼に勝利し、
彼がとても悔しがり再戦を要求した、
という経緯がありました。

その後正式に再戦する機会はありませんでしたが、
この合宿の最終日、
彼が去年のリベンジだ、挑戦を受けてくれ、
と言ってきたのです。

私はビビりました。

彼は去年私に負けてからメキメキと実力をつけ、
今や部活のエースでした。

私は入部当初は経験者ということで
上位の実力でしたが、成長がないので、
どんどん抜かされて、
とても彼には勝てそうにありませんでした。

普通に考えたら、彼の相手は
キャプテンしかいませんでした。

しかし前日の夜の作戦会議、
キャプテンは彼の対戦相手を私にしました。

「えー、光太先輩じゃ絶対勝てないよぉ、
 優勝かかってるんだから、キャプテン
 がいいんじゃないですかぁ?」

非難の声が他の女子部員からあがりました。

私もとても勝てそうになかったので
辞退したいと思いました。

背中をおしてくれた一言…

私が
オレも自信ない、キャプテンに変えてくれ__
そう口を開こうとしたときです。

キャプテンはニヤッと笑って
なんと端にポツンと座っていた
あの彼女に聞いたのです。

「●●は、和田でいいと思うよな?」

聞かれた彼女はびっくりしましたが、
やがて私の方を向いてこう返しました。

「大丈夫です。光太先輩は強いもん」

私は言葉がありませんでした。
彼女が眩しすぎました。
愛しすぎました。
イヤなど言えるはずがありませんでした。

そして、勝つしかありませんでした。

そして最終日最終試合、
私は優勝の命運を背負って、コートに立っていました。

逃げる自分への決別へ_
彼女が見守る中、運命の一戦!

観客は彼女だけでした。

他のチームメンバーもいませんでした。

しかしそれは私には関係ありませんでした。

それだけ集中していたのです。
私の前にはボール、ラケット、コート、
そして対戦相手の彼の姿だけが映っていました。

前試合で見せた緊張感は消え去っていました。

彼女が見せてくれた全幅の信頼、
その力が私に安心感を与えてくれました。

今まで試合に見に来てくれた他の後輩女子はいませんでした。

しかし彼女はいました。
私にはそれだけで十分だったのです。

彼女のために__。

試合はスピーディーに進みました。
互角に進みました。

彼は驚いているようでした。
同時に楽しんでいるようでもありました。

「やっぱり和田はオレのライバルだな」

そんなことをコートチェンジの際、
つぶやいていました。

ベンチにいる彼女とすれ違う際、

「私が推薦したんだから、大丈夫ですよ!」

と言われました。
絶対に負ける訳にはいかない、と思いました。

彼女のためにも、負けるわけにはいきませんでした。

劣勢、みなぎる決意

しかし試合は終盤に差し掛かり、
私は劣勢に追い込まれました。

彼が強烈なショットを放ち、
私の疲労が蓄積されてきたのです。

そのうちにギャラリーも集まってきました。

同時進行で行っている試合が終わって
集まってきているようでした。

おもったより善戦している私を見て
驚いているようでした。

真剣な眼をしたキャプテンがいました。
驚いているチームの皆がいました。
相手チームもいました。
前日試合した自称イケメンもいました。
そして心配そうに見ている彼女もいました。

前日の試合のように
たくさんのギャラリーに囲まれることになりました。

私はこれはチャンスだと思いました。
逃げてばかりいた、自分を変えるチャンスだと。

元々この試合も彼が恐くて変えてもらおうとしました。

しかし彼女の視線を受け止め、
彼と戦うことにしました。

そして昨日は緊張し、ミスばかりした
たくさんの観衆の前での決戦__

辛かった過去を乗り越える
そのための闘いだと思いました。

甘えん坊だった時代を思い出しました。

両親の離婚、いじける自分を思い出しました。

「たれぱんだ」の彼女、中村君を思い出しました。

逃げてばかりいた自分の過去を思い出しました。

ここで、彼に勝利し、
君のお陰で勝てた、過去を決別できた、
そう彼女に言って告白しよう__

そう、決意しました。

私は劣勢を巻き返していきました。

面白いように私のサーブは決まっていきました。
リターンの読みが当たり、
彼のサービスゲームをブレイクしました。

ギャラリーはどよめきました。

合宿の最後に熱烈な一戦、
彼らも興奮していました。

キャプテンも叫んでいました。

いけ!和田!
と。

そしてついに私の
マッチポイント(王手)まできました。

私は勝利を確信しました。

勝敗、そして__。

しかし、その時私は見ました。
彼女の方を。

見てしまったのです。

勝利を確信し、
その後の告白の想像をした時、
つい彼女の事を考え、
彼女の事を見たくなってしまったのです。

そして見てしまったのです。

彼女が他の男子部員と仲良くしているところを。

彼女は赤くなって他の男子部員と談笑していました。
私には背を向けていました。

談笑している彼は私が以前から
彼女と仲良いな、と思っていた子でした。

私は動揺しました。

最後に
彼女の信頼している眼差しを
受けて勇気とパワーを貰おう
と考えていた目論見は失敗しました。

集中しきれないまま、
サーブをはなちました。

ネットにかかりました。

次もネットにかかりました。

私はダブルフォルトをしてしまいました。

明らかに動揺し、おかしくなった私に
観客はヤジをとばしました。

私はマズイ、と思いました。

対戦相手の彼はそのスキを逃しませんでした。

結局、そのまま呆気なく
私は負けてしまいました。

責められる彼女、逃げる自分

「誰だよ、光太先輩で良いって言ったのはよ」

試合後、自チームの反省会で、
そのような声が飛びました。

彼女は小さくなっていました。

私は何も言えませんでした。

彼女は他の女子たちからも
ネチネチ光太先輩なんか推すから、
と責められていました。

私は見ていられませんでした。

敗北…逃走…

そして、本当に情けないことですが
また、逃げたのです。

反省会からも逃げました。

そして、その後合宿終わるまで
彼女と話すことはありませんでした。

彼女とはそれっきり
あまり会う機会がありませんでした。

テニス部は基本男女別の曜日に練習していたため
あり得ることでした。

そのまま私は3年生にあがりました。

そしてひょんなことから彼女と接する機会を得たのです。

体育祭、天国と地獄

私の高校の体育祭は派手でした。

クラス分かれての縦割りで3つの団に分かれ、
優勝を競いました。

細かい説明は省きますが、
そこで私のクラスと彼女のクラスは同じ
団になりました。

そして同じ装飾班になってしまったのです。

これは私にとっては当然嬉しいことでした。
しかし、同時に私は恐怖も感じていました。

この班には当然私のクラスの他の級友などがいました。

部活以外の私を彼女に見せるのが恐かったのです。

友だちがいない自分は
とても見せられませんでした。

彼女は私と一緒の班で喜んでくれました。
最初の集会の時に
一緒にがんばりましょうね!
と話しかけてきてくれました。

しかし、私は恐かったのです。
周りの目を気にしていました。

装飾の作業中などは、当然みんな私語もします。
おしゃべりもします。

他のクラスの男子などは気軽に女子達などと
どつきあったり、からかいあったり、
楽しくおしゃべりをしていました。

私はむっつりひとりで仕事をしていました。

彼女は友達と談笑しながら
不思議なように私を見ていました。

はじめは話しかけてきてくれましたが
段々と他の男子たちの方と話し始めました。

私はひとりでいたのだから当然です。

それでも気を遣ってか、
私にも話を振ってきたりしてくれました。

彼女は強く優しかった、
そして私はもろく臆病だった。

私は本当に辛かったのです。

やがて班の活動にいかなくなりました。
サボりだしたのです。

また、逃げたのです。

彼女の顔が浮かびました。
でも、私の足は集会室に向かいませんでした。

ひとり家に帰り、
ずっと彼女ことだけを考えていました。

特にサボっても、文句は言われませんでした。
私など特にいてもいなくてもかわらない、
という感じでした。

私が自分の殻に閉じこもっている間に、
体育祭は終わりました。

遠目から見る班のみんなは、
青春で清々しく、爽やかに肩を抱き合っていました。

彼女もいました。

私のことなどまるで忘れたかのように、
みんなと一緒になってはしゃいでいました。

私は、泣きました。
自分の弱さに。

ひとりぼっちの卒業式…

普通卒業式の後は、
みんなで寄せ書きをかいたり、
先生たちにお礼を言いに言ったり、
後輩たちと写真をとったり、
色々と忙しいものなのでしょう。

しかし私はヒマでした。

私は友人がいなかったので
みんなの感動の輪に入れず、
ひとりポツンとしていました。

誰ひとりとして帰ろうとしないし、
私は卒業証書を手にしたまま、
動けずにいました。

帰りたい、
と思いました。

でも、本当は名残惜しかったのです。

誰か仲間に入れてほしかったのです。

でもクラスの連中は
このあと打ち上げいこうぜ!
と盛り上がってどこかへ行ってしまいました。

先生方もあまりハメを外すなよー
とからかっていました。

私は廊下を通って帰ろうとしました。

少し泣いていたかもしれません。

卒業を祝える友がいないので
逃げるように下校…

何人かの同級生や先生と目が合いました。

しかし皆、私をみると視線をサッと外しました。

私は校門へいきました。

これで最後、最後の日。

もうこの「女子校」へは戻ってこない。

悔いはないのか?
やり残したことは?

ない、、、とは言えない。
でも、もういいんだ。

そんな問答を頭の中で繰り返していました。

だからその光景をみたときはびっくりしました。

彼女が、校門の前にいたのです。
数人の友人たちと一緒に。

私はマズイ、と思いました。

卒業式の日に、孤独に、
一人寂しく帰る姿を見られたくなかったのです。

彼女は友人たちと談笑していて
こちらに気づいた様子はありませんでした。

私は急いで踵をかえしました。

校内に戻りました。

行くあてなどありませんでしたが、
とにかく彼女に見つかるわけには行かなかったのです。

何処かに隠れていよう、そう思ったときでした。

後ろから思いがけない声が聞こえました。

「また、逃げるんですか?」

彼女でした。

ひとりで私の方をまっすぐ見ていました。

「光太先輩は、逃げてばかり。
 そんなんじゃ、彼女もできないぞ」

彼女は少し笑ってそう言いました。

私は返す言葉がなく、彼女に向き直って、
うつむいていました。

「泣かないでください。
 __私がいいものをあげます。」

お世話になったお礼です。

そう言って彼女は私に銀のキーホルダーをくれました。

___Kota

私の名前がアルファベットで書かれたそれは
薄く青い光を放っていました。

「え…」

私は戸惑いました。

「逃げたくなったら、それを見てください。
 きっと勇気をもらえますから。」

約束のキーホルダー

「約束してください、
 もう、逃げないと。」

私はそのキーホルダーを見ました。

青く光り輝くそれを見ていると
何故か勇気が湧いてくるような気がしました。

「うん、、約束する。」

私はどこか遠い声でそう彼女に答えました。

「うん、…大丈夫、先輩はスゴイ人です。
 私が、__推薦しますよ。」

彼女は少し感慨深い顔になって、
そう言って去っていきました。

慈母のような微笑みを浮かべ私を見つめる
双眸に私はすっかり魅了されていました。

美しい、そう感じました。
そのまま私は立っていました。

キーホルダーをその手に握りしめたまま。

fin…

 


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