30年近く童貞、友達ゼロ人、借金まみれで
若ハゲに苦しんでいた見栄っ張りで弱虫な男が
ある日落ちた、7つ下の娘に対する本気の恋…
全てを捧げてもいいと思った女性から
全てを否定され、絶望の淵で
出会った謎の胡散臭いモミアゲ男…
2つの思いがけない出会いにより
無経験、無職のサエナイ男が
わずか数ヶ月で、多くの女性と関係をもち
美女から求められる男へと変化した奇跡の物語…
From 和田光太
東京都、世田谷区
火曜日、午前10時17分
私はいつも逃げていました。
女性に対して、他人に対して、人生に対して、
そして、自分に対して。
全てから逃げていました。
自分の気持ちを正直に表現できませんでした。
真剣に人と向き合うことが出来ませんでした。
相手の目を直視して、
「愛している」
と伝えることがどうしても出来ませんでした。
傷つくのが恐かったのです。
自分のチッポケなプライドだけを大事にして
全てのことに対して逃げていたのです。
その結果家族とは断絶し、
お金もなくなり借金を抱え、
友人にも裏切られ、一人ぼっちになり、
アルバイトはクビになり、
ストレスから20代のうちにハゲの兆候が現れ、
そして本当にどうしようもないくらい好きで、
理解してほしかった女性にはフラれることになりました。
本当に夜も眠れないくらい好きで
どうしようもなく求めた彼女に否定され、
関係がどうしようもなく終わってしまった時、
私は始めて、後悔しました。
始めて女性の目を見て気持ちを
不格好ながら伝え、それでも届かない想いに、
私は胸が締め付けられ、ひとり、号泣しました。
今まで逃げてばかりいた自分、
傷つくことを恐れてどうしても
一歩を踏み出せない自分を憎みました。
そんな私が
その心底好きだった彼女に捨てられ、
その後に出会った、
ある「胡散臭いモミアゲ男」の教えを期に、
人生から逃げることをやめ、
30年間近くの童貞を卒業し、
今までは相手にされなかった
大学の後輩の美少女から迫られたり
アルバイト先では私を巡って
女性同士の争いが起きたりするなど
女性から求められる男へと
変化した物語をあなたへとシェアします。
この手紙でお伝えすることは100%真実であり、
1ミリの嘘も含まれていません。
ですので
正直言ってあまりカッコ良い話ではありません。
情けなくて顔を覆いたくなる部分も多々あります。
だからお願いがあります。
絶対に読まないでください。
私の心の中に強い摩擦があります。
自分の情けない人生を公開し続けることに対して
強い抵抗を感じています。
女性を魅了する男になる、
多くの女性を幸せにする使命を担う、
そういう覚悟をお持ちでないと
読んでほしくないのです。
私の勝手なエゴかもしれません。
ですがプライベートな話も含まれています。
人格を否定され、心をズタズタに引き裂かれて、
大声で叫びたいほど辛かった恋の経験…
出会って数秒で距離が近づき、
つかの間の夢のような時間の後、
突然冷水を浴びせられ、
不幸が全て降り掛かってきた悪夢のような恋…
恥ずかしさ、恐怖、妬み、痛み、
書いているだけで
当時の辛い感情が湧き上がってきます。
インターネット上に
自分のプライベートの恋を
公開することに対して本当に葛藤があります。
なのでいつこの手紙の公開を終了するか、
分かりません。
3分後には見れなくなる可能性もあります。
女性を本当に幸せにする、したい、
そういう覚悟をお持ちの貴方、
今すぐ最後までお読みください。
私の生い立ちをお話しますね。
私の名前は和田光太と言います。
私の名前は和田光太と言います。
1988年5月18日、
東京都杉並区、浜田山。
閑静な住宅街の一角にある
古びた助産院で、私は生まれました。
私の両親は兄の長男は
病院で出産しましたが、
赤子をすぐに引き離される環境に
疑問を覚え、次男である私は、
助産院で出産することにしたそうです。
閑静な住宅街のアットホームな環境で
誕生した私は、生まれてからすぐ
母親に抱かれることが出来ました。
母親も、長男がすぐ抱けなかったため、
私は赤子の時から甘やかしていたようです。
幼いころは甘えん坊でした。
幼年時代はすぐ泣く子どもでした。
何かあるとすぐエンエン泣いて母親に甘えていました。
基本的に恐い父親も私が泣くと優しくなってくれました。
特に何か4つ上の兄にいじわるされたりすると、
すぐ泣いて両親を呼んで弟の特権を使って
「お兄ちゃんがいじわるした!」
と言って
怒ってもらっていました。
兄だけではなく友達などから
いじめられたり仲間はずれにされたときも
両親に泣いてすがっていました。
4つ上の兄には時々いじめられたり
していましたが、それでもやはり
他の友達などからいじわるされたりした時は
助けてくれました。
とにかく困ったら泣いたりいじけたりして、
周りに示していれば誰かが
解決してくれると思っていました。
ワガママ放題で弱虫だったと思います。
保育園に通っていたのですが、
そこでも先生たちに甘えて
子どもたちの中ではリーダーぶっていました。
特に
若い女性の先生に甘えるのが好きでした。
保育園の若い先生にワガママ言って
困らせるのが大好きでした。
私は今も年上のオバサンたちとは
何故かすぐなついてしまうので
生まれつきなのかもしれません。
そんなわけで母親には特に甘えていましたが、
厳しくも優しい父親のことも大好きでした。
特に本当に困ったときや嫌なときは
頼りになってくれたのは父親でした。
父は養護施設の調理師で、
いつも健康に気をつけた
暖かく素朴な食事を作ってくれていました。
煮物や惣菜などを一生懸命作っている
父の姿が私は好きで、
いつも彼の背中に抱きついて調理するのを見ていました。
しかしそんな甘えん坊の時代も
突如終わりを迎えます。
ある日、父親がいなくなりました。
小学校2年生の頃に両親が離婚しました。
ある日朝起きると、
父がいなくなっていました。
母は
「お父さんはしばらく離れて暮らすから」
と私たち兄弟に告げました。
母は思い詰めた顔をして朝食の準備をしていました。
子供心に、ただ事ではない、と感じました。
私は不安でいっぱいで、
兄や母に、なんでお父さんいないの?
と何度も何度も尋ねました。
母はすぐ帰ってくるから、
と繰り返すだけで、その他には何も教えてくれませんでした。
兄は父に私以上になついていましたので
当時は全然気付きませんでしたが、
本当にショックを受けていました。
私はそんな兄に気が付かず、
「お父さん何処いっちゃったの?」
と繰り返していました。
兄は分からない、と首を振るだけでした。
4人家族の食卓が子ども2人だけに…
いつまでたっても父は帰ってきませんでした。
教員だった母は忙しくなり、
深夜になって家に帰ってくるようになりました。
夕食は調理師の父がいないため
いつもコンビニやスーパーの弁当や冷凍食品でした。
父親の手料理が好きだった私たち兄弟は
温かい料理が食べたいと文句を言いましたが、
どちらかと言うと仕事人間だった母は
料理がニガテでした。
時々休日などは作ってくれましたが、
父の料理と比べられる物ではありませんでした。
平日は基本的に母は深夜に帰ってきていたため、
兄と2人で夕食を食べました。
まだ10にも満たない私は今日あったことや
学校のことを伝えたいので母の帰りを待っていました。
しかし母は仕事で疲れているのか、
帰ってきてもすぐ寝てしまいました。
相手してくれない母、いじける自分
本当に彼女も大変だったのだと思います。
でも当時の甘えん坊な私は
当然不満に泣きわめき、いじけました。
当時私は小学校で模型工作クラブに入っていました。
週一回のクラブ活動で何か工作などをするクラブでした。
ある日母はデパートに行った時、そのクラブ活動用に
プラモデルを買って私にくれました。
私は嬉しくなって次の日にそれを作りました。
頑張って試行錯誤をして、兄にも頼らず、
始めて自分の手で一日かけて
不格好ながらなんとか形にしました。
とても誇らしくて、早く母に見て欲しくて、
いつまでも、母が帰ってくるのを玄関で
プラモデルを持ちながら待っていました。
母に褒めてもらいたくて
夜更かしをして待ってました。
やがて夜遅くに、母が帰ってきました。
私は嬉しくなって、母に得意げに
作ったプラモデルを見せました。
母は怒りました。
クラブ活動で作るものでしょ、
作っちゃったらダメじゃない!
と彼女は私を叱咤しました。
彼女は言い分は正しいものでした。
ですが私は本当にショックを受けました。
当時の私も母の叱る理由が正しいのは分かっていたので
口答えはしませんでしたが、
自分の、頑張って上手く作ったね、
と褒めてもらいたい、
という気持ちに気づいてくれないことに
対して深い悲しみをおぼえました。
私は一転して表情を曇らせ、
持っていたプラモデルを思いっきり投げました。
プラモデルは勢い良く壁に当たり、
割れてパーツがそこら中に飛びました。
割れるプラモデル…幼き心
母はびっくりしました。
私は玄関から外へ走っていきました。
背後から私を呼ぶ母の声が聞こえました。
私は構わず泣きながら夜の街に駆けていきました。
母が、追いかけてきてくれることを期待して。
夜の街は近所とは言え、
まだ10にも満たない私には恐かったので
近くの公園に行きました。
でも何故かあまり見つかりやすい場所にいるのは
嫌だったので、ベンチの後ろに隠れていました。
いつまでたっても母はやって来ませんでした。
それで私は気づきました。
泣いても、いじけても、甘えても
もう誰も助けに来てはくれないんだな、
と。
自分ひとりで人生、
生きていかなければならないのだ
と思いました。
それから私の甘えグセは段々消えていきました。
甘えん坊が消え個人主義になりました。
人に頼らず、なんでも自分でやるようになりました。
小学校時代はヤンチャな悪ガキで、
学校の成績も最悪でしたが、
中学校時代はトップクラスになりました。
しかし小学校時代は騒がしく
クラスの中心人物で
ムードメーカー的存在であった私も、
中学では孤立し、いつもひとりぼっちになりました。
正確に言うと、両親の離婚を期に、
段々と私の性格が内向的になっていき、
小学校高学年の6年生あたりでは
もう友達もほとんどいなかったのです。
なんとなく、自分の殻に閉じこもり、
「自分は何なんだろう」
と考えることが多くなっていきました。
そんな精神的な経緯もあってか、
この時期に切ない恋をしました。
中学校2年生の時期に、
クラスのアイドル的な女の子に片想いしました。
クラスのアイドルに片想い…
彼女は快活な人気者で中学生とは
思えない大人っぽい美しさを持っていて、
男子生徒は皆憧れていました。
もちろん私も例外ではありません。
最初
「よろしくね」
的なことをニッコリと言われただけで
すっかり彼女の虜になってしまいました。
彼女は成績優秀で頭もよく
所属しているバレー部ではエースで
そのうえ明るく人当たりも良く友人も多いという
まさに学校のアイドルといった感じの女の子でした。
私はなんとかして彼女に近づきたかったので
毎日授業の合間に彼女を横目で見ては
何か良い方法はないかと思って悶々としていました。
しかしそんな私に僥倖が訪れます。
席替えです。
私は彼女の隣の席をゲットしたのです。
私はびっくりしました。
とてもうれしく思いました。
そして不安や緊張感も感じました。
私はなんとかしてこの機会をものにしたいと考えました。
しかし私はなかなか話かけられませんでした。
ただそんな中でも給食や掃除や
ちょっとした合間などに話すことができて
少しづつですが彼女との距離が縮まりました。
給食の時は班になって席をくっつけて食べるため
私と彼女は隣同士なため必然的に向い合って食べることになります。
女の子の顔を見られず、
目をつぶって食べていました。
私はいつも彼女を直視する事ができず、
目を伏せたり細目で食べていました。
私はもともと目が小さい、
細目だと言われがちだったため
彼女からはまるで目をつぶって
食べているように見えたと思われます。
実際、彼女は友人に
「和田くん、給食の時眠りながら食べてるんだよ~」
みたいなことを言っていたらしいです。
もう本当に情けなくて仕方ありません
好きな子の事を見られない臆病者っぷりは
その後なかなか改善されませんでした。
そんな楽しい?隣人生活も当然幕を下ろします。
席替えの季節です。
もっと彼女の事を見ていたい、と思いました。
私は
「ああ、これでもう彼女と縁もなくなるのか…」
と思ってがっかりしていました。
しかし何処か悪運が強い私。
なんとまた彼女の近くの席をGETしました。
今度は隣ではなく、斜め前でしたが
少し仲良くなっていた私と彼女は
しばしば授業のことなどで話しました。
私は成績が良かったため、
何度か彼女に英語を教えたりしました。
徐々に、少しづつですが
彼女と私は仲良くなっていきました。
男子生徒たちとは親友と呼べる存在はおらず、
とりあえず上辺だけの感じで上手く付き合っていました。
そんな中、一人の男子が私と急速に仲良くなりました。
突然できた親友…
そして恋のライバル…
私はずっとひとりで孤独で
友達と休日遊びにいったりはしなかったのですが
彼とは誘われて休みの日に遊んだり、
映画を見に行ったりするようになりました。
そんな中、彼は私に恋愛の相談をしてきました。
彼は彼女が好きであると。
彼女はクラスのアイドルだったので
私はそんなに驚かなかったのですが
やはり動揺は隠せませんでした。
彼は続いて聞いてきました。
「和田は、誰が好きなんだ?」
私は沈黙しました。
彼のように正直に言うことなど出来るはずもありませんでした。
「オレは、、いないよ」
私はそういって自分の気持ちを隠しました。
自分の気持ちを隠しました。
彼はそうか、
と言ってそれなら自分の恋を応援して欲しいと言いました。
私は嫌だというわけにもいかず、頷きました。
それから彼は私に色々と彼女の事を聞いてきました。
何が好きか?
どこに住んでるのか?
趣味は何か?
彼氏はいるのか?
彼は私と彼女がそこそこ仲が良いと思っていたらしく
そんなことを色々と聞いてきました。
私は全てに答えられるわけではなかったのですが
答えられるものは全て正直に答えました。
彼はありがとう、頑張るよと言って笑ってくれました。
しかし私は複雑な気分でした。
自分の恋敵を応援していることになっていることもそうですし、
彼が自分に近づいてきたのは
彼女に近づくためだったのではないか、とも感じていました。
上手くいく2人、湧き上がる嫉妬心…
その後
その彼と彼女は少しづつ仲良くなっていきました。
彼が逐一進捗を報告してくれるし
彼らが話しているところにしばしば私もいたのでそれはよく分かりました。
私は嫉妬を感じていましたが
どうすることもできませんでした。
やがて彼女の誕生日が近づいてきました。
彼は映画に誘ってプレゼントして告白するつもりだと
私に言いました。
私はまだやめといたほうが良い、と言いました。
もちろん彼らがくっついては困る、
という気持ちもあったのですが、
客観的に見ていて、確かに仲良くはなっているけど、
告白は断られるだろうと思ったからです。
勿論彼女に対する恋心があったので
冷静に見ることができていたかは分かりません。
彼はそれでもすると言って
私に彼女が誕生日に何が欲しいか聞いてきてくれと頼みました。
私はイヤだったので断りましたが
彼がとても真剣な表情で頼むので
最終的に請け負ってしまいました。
それでも彼女にそんなことを聞くのはとても勇気が入りましたし、
とても人前では聞けませんでした。
困った私は放課後彼女を教室に
呼び出して聞くことにしました。
部活をサボって彼女を放課後、教室に呼び出す…
彼女の友人に放課後
彼女を呼び出してくれと、頼んでいる時
まるで告白しようとしているみたいじゃないか
と自分で思い、とても恥ずかしくなりました。
教室で彼女を待っている時間は
永遠のように感じられました。
私は早く役目を終えたい気持ちでいっぱいでしたが
来ないなら来ないでくれ、と思っていました。
しかし、しばらく経って彼女は現れました。
「どうしたの?」
そんな風に笑って彼女はいつもどおり
笑顔で私に問いかけてきました。
__誕生日何が欲しいか聞かなきゃ、
__早く役目を終えて逃げ出したい、
私はすごい緊張感を感じて心臓はバクバクでした。
「今日はテニス部ないの?」
私は部活はサボっていました。
彼女はそう聞きながら自分は部活あるんだから
早く要件を言って、という感じに私に詰め寄ってきました。
私は__ムリだ。
と思いました。
2人でいるだけでドキドキして
頭が真っ白でした。
誕生日プレゼント何がほしい?
なんてどうしたって聞けない、と思いました。
当時の私にはそんなことを聞く勇気すら持てなかったのです。
私は諦めて、ごまかしてその場を去ろうと思いました。
「中村くんに何か頼まれたの?」
私はギクッとしました。
中村というのは彼の事でした。
私は動揺が隠せず間抜けに
「え?どうして気づいた?」
と言ってしまったのです。
言ってからしまった、と思いました。
彼女はそうだと思った、と言いました。
どこかつまらなそうな表情でした。
「部活ちゃんと出たほうがいいよ」
そう言ってまた明日ね、と言って
彼女はスタスタと教室を出て行ってしまいました。
一人残された私は罪悪感でいっぱいでした。
役目を果たせないどころか、
彼に頼まれてきたことも言ってしまいました。
彼に対して本当に申し訳なく思いました。
同時に疑問もありました。
どうして彼女はそのことに気づいたのだろう、と。
私は色々と考えましたがまるで見当が付きませんでした。
ウソにウソを重ねました…
翌日、彼にどうだったと聞かれました。
私は困りました。
正直に聞けなかったし、
君に頼まれたということも言ってしまった
と言えばよかったのですが
私はウソをついてしまいました。
聞けた、と彼に答えてしまったのです。
当然聞けてないので
彼女が誕生日に何を欲しがっているか
なんてまるで知りません。
「ほんとか!ありがとう、で彼女はなんて?」
当然彼は聞いてきました。
私は彼女が『たれぱんだ』のグッズが好きだったことを思い出しました。
『たれぱんだ』とは当時流行っていた
たれた耳?をもった可愛らしいパンダのキャラクターです。
『たれぱんだ』が役に立ちました。
彼女はそのグッズを集めていて、
私も一度英語を教えたお礼に
『たれぱんだ』の絵がついた消しゴムを貰ったことがありました。
ぬいぐるみとか大きい物はもっていない、
と言っていたような気もしました。
そこで『たれぱんだ』のぬいぐるみが欲しいらしい、
と私は彼に答えました。
全くのデマカセですが
彼はなるほど!と言って喜んでくれました。
私は彼は私のでまかせに従って
『たれぱんだ』のぬいぐるみを
彼女への誕生日プレゼントに買うのだろうか
と思いました。
そして重い罪悪感にかられました。
そして彼は実際に買ったのです。
運命のデートの日…
そして彼女の誕生日がやってきました。
デートはできなかったようですが
彼は『たれぱんだ』のぬいぐるみを
彼女にプレゼントしたそうです。
彼曰く、とても喜んでくれたそうです。
告白は勇気が出なくてできなかった、
と彼は述べていました。
正直に答える彼を見て
私はとても自分が情けなく感じました。
その後まもなくして彼は彼女に振られました。
フラれた親友を
ほくそ笑みながら慰める私…
私は彼を慰めましたが
内心はほっとしていました。
彼は初めはショックを受けがっかりしていましたが
次第に落ち着いていきました。
最終的には彼はすっきりとした顔を浮かべていました。
私は自分とは違い勇気を持った行動ができる彼を
かっこ良いと思いました。
自分も何か行動を起こさなければいけない、
と思いました。
アイドルの友人とネクラの男子のペア
当時私は生活委員会に属していました。
中学校の委員会活動は各クラス男女1人ずつなのですが
私のパートナーは
『たれぱんだ』の彼女の親友の女の子でした。
その子も彼女と同様、華やかなタイプで人気がありました。
生活委員会はなかなか仕事が多かったのですが
放課後各教室を見まわって戸締まりをし、
まだ残っている生徒がいないかチェックすることも仕事の一つでした。
その役目は週に1回くらいで各クラスに回ってきました。
ある日、私がその子と見まわっている時、
彼女が聞いてきました。
「ねえねえ、あの時どうだったの?」
私はギクリとしました。
少女は内気な少年の恋に興味津々でした。
あの時とは
『たれぱんだ』の彼女を放課後呼び出した時です。
私はその彼女をに言伝て、彼女を呼び出したのでした。
私はごまかそうと
なんでもないよ、と答えました。
「告白したんでしょ?」
これだから女の子は、と私は思いました。
この子も普段は大人しく控えめに振舞っているくせに
本当にこういう話は興味津々なんだ、と思い私は不快になりました。
しかも私みたいな根暗がアイドルみたいな彼女に告白した
ということを楽しんでいるようにも見えて本当に腹がたちました。
私は怒ったので無視して早く見回りを終わらせようと早足になりました。
彼女は追いかけてきて色々と聞いてきます。
「映画に誘ったんだって?」
「時々英語教えてもらってる、とか言っていたよ」
「『たれぱんだ』あげたんだって?上手くやったね、喜んだでしょ?」
私は無視していつになく手際よく、作業を終わらせました。
私はムカついて無視していました。
彼女も最終的には口数も少なくなり
仕事を終えて帰ろうとする私にこう言いました。
「ごめん、怒っちゃった?」
私は心底済まなそうな彼女の顔を見て
怒りがすっとしぼんでいきました。
「いや、、こっちこそごめん無視して」
「いや和田くんの気持ちも考えずに、ごめんね」
彼女は優しいな、と思いました。
不思議な事にさっきまで憎く思っていた彼女が
愛らしく感じられました。
現金なことにさっきまでの怒りはどこかへ消え
私はとてもハッピーになりました。
本当男とは単純なものです。
しかしこのハッピーな気持ちも、
次の彼女の一言でかき消されます。
「フラれちゃったんだもんね…」
は?
それはオレじゃない、
私は混乱しました。
勘違いでフラれた事になっていました…
思い返してみると彼女は勘違いをしているようでした。
映画に誘ったのも、『たれぱんだ』をあげたのも、私ではありません。
私に相談していた
中村君と私を勘違いしているようでした。
私は訂正しようとして
「それはオレじゃない」
と言いました。
彼女は悲しそうな顔をしていました。
悲しいのは分かるよ、という顔をしていました。
じゃ、私部活行くから
和田君も元気だしてがんばってね、
そういって去ろうとする彼女を私は呼び止めました。
本当のことを言いたい、
自分を分かって欲しいと思いました。
彼女は足を止め、
戸惑った目を私に向けました。
私は誤解されたままはイヤだったのです。
それはオレじゃなくて中村だよ___
そう口にしようとしました。
しかしその瞬間、
一度彼を裏切ってしまったことが頭によぎりました。
彼の顔、告白が終わって、これからは部活を頑張る、
と言っていたすっきりとした表情が思い浮かびました。
私のウソにもありがとう、と言って深く感謝してくれた彼を思い出しました。
私は言えませんでした。
ごめん、なんでもない、じゃあね…
と代わりに言いました。
彼女は去って行きました。
私は脱力しました。
様々な思いがこみ上げてきました。
色々な気持ちがありましたが
結局自分は何も言えないのだ、と思いました。
またウソを付いてしまった、と思いました。
静かに一人教室で泣きました。
委員会の先生が来るまで泣いていました。
先生が来た時は泣いてはいなかったので
見回り終了の報告をもらったのに
下校指導をした委員が残っているとは何事だ、と叱られました。
私はそういえば委員会の仕事だったんだな、
報告すっかり忘れていたけど彼女がしてくれたのか
と思って彼女に感謝し、家に帰りました。
何も言えない自分…孤独、罪悪感…
それからゆるやかに日常が流れて行きました。
私と彼女と中村君は疎遠になりました。
何故かクラスの中で私が彼女にフラれた、
というような空気が出来上がっていて
私はなんとなく彼女に近づけなくなりました。
中村君は別のクラスの子にすぐさま恋をして
すぐに彼女にしてしまっていました。
彼も私とつるむことはなくなり、
クラスのイケてる男子連中とつるむようになりました。
思い返せば、私と仲良くなる前、
元々はそうだったような気がしました。
『たれぱんだ』の彼女はいつもどおりでした。
いつもどおりに明るく、可愛く、幸せそうでした。
英語は他クラスの帰国子女の男子にいつも教えてもらっているようでした。
そんな感じで私は孤独に戻りました。
不思議と嫌な気持ちはしませんでした。
ボクは幸せになる資格はないと思いました。
ただ、ひたすらに自分を責めていました。
言いたいことが、言えない自分を___。
「和田は誰が好きなんだ?」
「中村くんに何か頼まれたの?」
「振られちゃったんだもんね…」
本当の気持ちを言えるチャンスはいっぱいあったはず、なのに___
本当のことを、答えられない。
自分の気持ちを伝えられない。
だからみんな離れていってしまった。
弱い、情けない自分に嫌気が差して。
それからは一心不乱に勉強をしました。
恋のことは忘れて、取り憑かれたように
問題集を開き、黙々と勉強をするようになりました。
とにかく問題を問いている間は
色々な事を忘れられたし、
成績が上がっていくことで
唯一自分の生きる意味を感じることが出来ました。
「女子校」に入学…
高校は猛勉強の末、
第一志望の都立高校へ合格しました。
その高校は男女の比率が
極端に偏っていて、
8割以上女子生徒でした。
私は英語が得意だったため
その高校を志望した、と
表向きは言っていましたが
あの『たれぱんだ』の彼女以降
恋愛から遠ざかっていた
私の気持ちが無意識のうちに、
女の子を求めていたのかもしれません。
とにかく通称『女子校』と呼ばれる
その高校に私は晴れて入学しました。
入学式で真新しい制服を着て、
同じく着慣れない制服を着た
同級生のキレイな女子たちを見て
中学でのガリ勉な自分は捨てて
甘酸っぱい恋愛体験をするんだと決意しました。
クラスに男子は6人…
1年のクラスは40人以上いましたが、
男子生徒は7人しかいませんでした。
しかもそのうちのひとりは不登校に
なり、学校へ来なくなってしまったので
実質学校へ来ているのは私を含めて6人でした。
私は高校デビューを期待していましたが
女子たちとは緊張して話せませんでした。
それよりも孤立しないように
他の男子5人と仲良くなることに
一生懸命でした。
中学時代から奥手で人付き合いが
ニガテだった私は何とか孤立しないように
他の男子達とつるむことで精一杯でした。
しかしその後は私は注目を集めて
一目置かれることになりました。
中学時代の猛勉強のおかげか、
最初のテストで学年トップクラスの
点数をとってしまったのです。
一瞬の「リア充」体験…
クラスの華やかな女子たちや
イケてる男子グループも私に注目しました。
小学生にとって
足の速さが人気に直結していたように
高校生にとって勉強の不出来は
注目を集めるのに十分なようでした。
入学当初は冴えない私に興味がなさそうに
したいた男子たちも
私とつるみだしました。
そして彼らと仲良くしていた
華やかな女子グループも
私とからみだすようになりました。
華やかな同級生女子は一緒にいるだけで
甘い匂いがしました。
1年生の前期にある遠足などのイベントや
打ち上げも私はリア充グループの中にいました。
私は嬉しかったです。
今まで接点のなかった
モテる男子たちや
人気ある可愛い女の子たちの
グループに入れるなんて夢のようでした。
頑張って彼らの雰囲気に
溶け込もうとしました。
しかし、
しかし、
それはつかの間の夢でした。
私はすぐに彼らとつるむのをやめて
孤独になります。
原因は彼らにあったわけではありません。
私が彼らを避けたのでした。
まだ見ぬ恐怖から逃げる臆病者。
本当に嬉しかったのです。
リア充グループの一員になれたのは、
私にとってありえない幸運でした。
しかし当時の私には荷が重すぎたのです。
臆病者の私には。
逃げたのです。
幸せそうに青春を謳歌する彼らから、
逃げたのです。
彼らは優しかったです。
本当は根暗な私を
落ち着いていると言ってくれました。
人に強く言えない私を
優しいと言ってくれました。
私は彼らの強さ、
そして優しさが恐かったのです。
仮面をかぶり続けて
いつか隠された私の
本当に醜い部分、
「人生から逃げる」クセ
という部分が出て、
中学時代の失態のように、
消えない傷を
追ってしまう。
そんな恐怖がありました。
モテる男子と話していて、
中村君の事を思い出しました。
クラスの美少女と話していて
『たれぱんだ』の彼女の事を思い出しました。
そのことを思い出すと、
彼らの眼が見られなくなりました。
私は逃げました。
嫌われるのが恐くて、
グループから離れて、
孤独に戻りました。
高校デビューなど私には無理だったのです。
愛人を連れた父と再会…
また、この頃父親と再会しました。
数年ぶりに会った彼は随分老け込んで見えました。
彼は女性を連れていました。
彼女はまだ20代半ばで
私には大学生くらいに見えました。
父は彼女と結婚するから
祝ってほしい、
出来れば彼女とも仲良くして欲しいと
私と兄に頼みました。
私は困惑しました。
その女性は緊張してその日は
一言も喋りませんでした。
はじめは父を奪う魔女に見えました。
当時20歳だった兄は
何とも言えない表情で父の恋人を見ていました。
その後も私たち兄弟と父とその彼女は
しばしば会いました。
一緒に父の実家の長野県に行ったりしている間に、
私たち兄弟とその女性も段々仲良くなりました。
私や兄ともそんなに歳が変わらない
ということもあり、話題も合いました。
私にとっても普段接点のない女性と
話すことは新鮮でした。
年上のお姉さんができたようで嬉しくもありました。
父は一緒に住んでいたときは
厳しくも力強い頼りになる父でしたが
再会後は私たちに負い目を感じているのか、
とても優しく色々ものを買ってくれたりしました。
一緒にいたときにはそこまで
父の事が好きではなかった私も
とても父になついていきました。
泣く母、豹変する兄、逃げる自分
そんな折、母に父のことで問い詰められます。
母に隠れて父と会っていたことが
バレたのです。
私と兄は母の前に座り、
黙って彼女の言うことを聞いていました。
彼女は私たちと父が会うことに
ついては禁止しませんでした。
「貴方たちにとっては父親なんだから
やはり大事なのでしょう。」
そう彼女は言いました。
しかし彼女は続けました。
父の婚約者と会うのは、許さない、と。
彼女と貴方たちが会っていると思うと、
私は何故かとてもやりきれなくなる、
お願いだからもう会ってくれるな。
彼女はそう涙を流し、
私たち兄弟に懇願しました。
父も母も悲しませたくありませんでした。
私は母がかわいそうに思えました。
ただ仲良くしてくれと
頼む父に彼女抜きで3人で会いたい、
と言える勇気がないことも分かっていました。
私は隣に座っている兄を見ました。
彼は下を向いて
私の目も母の目も見ませんでした。
後日、父から連絡が来て
また4人で夕食をとろうということになりました。
私は兄にどうしようか、
と聞きました。
兄は呼ばれたから行くんじゃないか
と言いました。
私は母のお願いはどうするんだ、
と言いました。
兄は不機嫌な表情を浮かべて言いました。
「そんなの知るかよ。母はかわいそうだけど
オレにはどうしようもない。お前が決めろ!」
兄はたまった鬱憤を私にぶつけました。
私は兄は頼りにならない、
とついに悟りました。
彼は両親の離婚以後、
明らかにおかしくなって、壊れていっていました。
昔はのんびりして大人しくも
頼りになり、困ったときは
いつも助けてくれた兄はもういませんでした。
私は兄の愚痴をききながら、
「そうだ、頼れるのは自分自身だけだった」
と思い直しました。
ハーレム高校生活?
孤独に戻ってからの
私の高校生活は苦痛でした。
とにかく女の子たちと話せないのです。
貴方はもしかしたら
女子8割の高校生活…
ハーレム状態だと羨ましく思われるかもしれませんね。
しかし女子マジョリティだからか
相手たちがパワーを持っていて
どうにもこっちが気後れしてしまう感じがありました。
男子の言うことなど、まるで聞いてくれません。
ましてや私のような根暗な男子ならなおさらです。
当時全然女の子の扱いに慣れていない私にとって
難しかったと思います。
クラスの女子とは、どこか距離がありました。
結局3年間、中学の何人かの女の子のように
仲良くなった子はいませんでした。
とても悲しかったです。
そんなわけでクラスでは上手く言っていなかった私ですが
部活では幾分良い人間関係を作れていました。
高校では私は中学時代と同様、
テニス部に所属していました。
部活内では一応表面的には友達もいて、
特に孤独というわけではありませんでした。
テニス部は男女一緒の部活でした。
しかし基本的に練習日は分かれていたため
普段は女子部員と接する機会はあまりありませんでした。
夏の合宿など、一部のイベントで
交流する機会がある程度でした。
だから部活の合宿は私の中で
数少ない甘酸っぱい思い出を作る
チャンスの1つだったのです。
部活の合宿、夏の日の夢
そして2年生の夏の合宿で
私はこりずにまた恋に落ちます。
今度の相手は、1つ下の後輩でした。
高校時代の運動部は大抵どこもそうだと思うのですが
2年生がメインで、3年生は夏の時期にはもう引退していて
受験勉強に集中します。
合宿も1年生と2年生で行きました。
そしてそこで私は初めてその子と会話をし、仲良くなったのです。
テニス部の合宿場所は長野県でした。
バスで長時間かけて移動し、民宿みたいな宿に泊まりました。
テニス部が合宿で何をするのか?
当然練習です。
大体1学年20人くらいいたので
40~50人くらいの大所帯でした。
青春抒情詩は
スポ根漫画風味を帯びはじめる。
合宿は5日間くらいの日程でした。
4チームに分けて
最後の3日間くらいでチーム戦をして
優勝チームを決める、
みたいな流れだったと思います。
私と彼女は同じチームでした。
私のチームのリーダーは部のキャプテンで
彼が団体戦のチームメンバーの編成などを決めていました。
テニスの団体戦は通常
シングルス:3試合
ダブルス :2試合という感じですが
その時はそれに加えて
ミックスダブルス :2試合、
ランダム(なんでもよし):2試合
という感じでした。
ちょっとイメージしにくいかもしれませんが
とにかく色々な試合形式がありました。
顔も思い出せませんでした。
それで最初の試合で私は彼女とミックスダブルスでペアになりました。
キャプテンから編成表を渡され、
私はミックスダブルスのペアが後輩の女子だとは分かっていましたが
実はその時は顔も思い出せなかったです。
その時はまだ知らなかったのです。
でもそれは彼女も同じようでした。
その試合前の昼食時のことです。
食事の席は何故かクジで毎回バラバラに座っていました。
その時私と彼女は隣の席でした(まだお互い知らない)
偶然が重なりました。
私はシャイだったので特に隣に話したことない後輩の女の子がいても
無視でした。
前の席がわりと快活で話してくれる後輩の女の子だったので
その子と話したり、その子が話すのを聞いていました。
それでその子が彼女と話しているのも聞いていました。
その子:「●●ちゃん、次の試合は?」
彼女:「ミックスダブルスだよー」
その子:「へ~誰とペア?」
彼女:「それがわからないんだー」
その子:「え?どういうこと?」
彼女:「和田先輩なんだけど、誰だか分からなくて…」
そこまで言ってその子はクスッと笑いました。
「●●ちゃん、光太先輩なら隣に座ってるよ」
そこで思わず私と彼女は目を見合わせました。
それが初めて私と彼女がお互いを認識した瞬間でした。
ペアで試合、男を見せる挑戦
彼女は明るい子でした。
それまで話したことがなかったことがウソのように
私と彼女は急速に親しくなりました。
試合前にわちゃわちゃ話し、相手ペアに勝てたら
ジュースおごってあげると約束しました。
相手のペアは同じく2年の男子と、1年の女子のペアでした。
彼女はテニスは初心者であまり上手くなかったので
勝てるかどうかは私次第でした。
初めての試合だったので彼女はとても不安がっていました。
キャプテンがピリピリしていたので
負けたら怒られるんじゃないかとビクついていました。
私は大丈夫と励ましました。
彼女のためにも
絶対に勝ってやる、という気持ちでした。
オレが勝たせてやりたい、という気持ちでした。
ポイントを取る度にはしゃぐ彼女が
妖精に見えました。
試合はもつれました。
私と彼女はポイントをとる度にハイタッチをしたりして
いましたが、次第に劣勢になっていきました。
彼女は初心者でしたがボレーなどで頑張って活躍していました。
対する私は意気込みすぎてつまらないミスをしたり、
相手の男子に良いようにやられたりしていました。
結果負けてしいました。
スコアは5-7で、悔しくも敗北しました。
私は悔しくてたまりませんでした。
彼女は頑張ったのに負けたと落ち込んでいましたが
私はオレのせいだ、君はよくやったと励ましました。
次組む時があったら
今度は絶対に勝とうと約束しました。
後輩…募る想い
合宿は順調に過ぎていきました。
私たちのチームは前半の遅れを
少しづつ取り戻し、キャプテンも
段々上機嫌になっていきました。
彼女と私もそれ以降ペアは組みませんでしたが
練習や夕食時などで話していくうちに、
どんどん仲良くなっていきました。
私はどんどん彼女に惹かれていきました。
なぜ根暗な私が可愛い後輩の女の子と仲良く出来たのか?
貴方はここまでお読みになって疑問をもつかもしれません。
大きな理由がありました。
私のチームは上級生男子が
私とキャプテンだけだったのです。
浮かれて調子に乗る自分。
どういうことか?
キャプテンは終始イラついていました。
ぶっちゃげこの時期の彼は
部活改革に意気込んでいて、
かなり厳しくしていました。
そんなわけで他の部員、
チームのメンバー、
とりわけ後輩の女子たちは
みんなかなり怖がっていました。
それで私がある意味ラッキーなことに
慕われる結果になってしまったのです。
他の女子部員からも
「光太せんぱい~~」
と慕われ、大分調子に乗っていました。
チャラい同級生に喧嘩をウラれました。
当然他の同級生男子は
いい顔をしません。
とゆうか明らかにモテない私が
後輩女子に慕われているのを見て、
信じられない、といった感じでした。
そしてわりとチャラい、ロン毛の
ヘラヘラした同級生が絡んできました。
「和田なんて、ヨエーくせに
今度の試合でボコボコにしてやる。」
次の試合で私とその絡んできた自称イケメンの
彼とのシングルス・マッチが組まれました。
私は一応中学からの経験者だったので
それなりに部活では実力者でした。
対戦相手の彼は高校からテニスをはじめたので
負ける気がしませんでした。
女の子応援団、緊張、ミスの連続…
しかし、
試合は長引きました。
私がミスばかりしていたからです。
私はとても緊張していて、
つまらないミスを繰り返していました。
理由はひとつ、彼女が見ていたからです。
彼女だけではなく、
他の慕ってくれる後輩部員も見守っていました。
女子も多く見ていました。
自称イケメンの彼よりも、
私の女の子応援団のほうが多くいました。
窓際男子 VS 雰囲気イケメン
観客も面白がって見ているようでした。
試合は辛くも私が勝利しました。
しかし決着は相手の
ダブル・フォルト(つまらないミス)
でした。
私は自陣チームの方に帰っていきました。
キャプテンは予想外に苦戦した私に
「和田、全然ダメだな」
と苦言を言いました。
彼女は励ましてくれましたが
他の後輩女子は
「光太先輩ってやっぱりダサくない?」
と言って段々相手をしてくれなくなりました。
ライバルからの挑戦状…
彼女の前で一年越しの決戦!
合宿も最終日に入りました。
私たちのチームも段々勝利を積み重ね、
最後の試合で勝てば優勝出来る所まで来ました。
最後の対戦相手は
今の2年生エースがいるチームでした。
その彼と私は一年前、合宿初日に対戦していました。
その時私がまだ荒削りだった彼に勝利し、
彼がとても悔しがり再戦を要求した、
という経緯がありました。
その後正式に再戦する機会はありませんでしたが、
この合宿の最終日、
彼が去年のリベンジだ、挑戦を受けてくれ、
と言ってきたのです。
私はビビりました。
彼は去年私に負けてからメキメキと実力をつけ、
今や部活のエースでした。
私は入部当初は経験者ということで
上位の実力でしたが、成長がないので、
どんどん抜かされて、
とても彼には勝てそうにありませんでした。
普通に考えたら、彼の相手は
キャプテンしかいませんでした。
しかし前日の夜の作戦会議、
キャプテンは彼の対戦相手を私にしました。
「えー、光太先輩じゃ絶対勝てないよぉ、
優勝かかってるんだから、キャプテン
がいいんじゃないですかぁ?」
非難の声が他の女子部員からあがりました。
私もとても勝てそうになかったので
辞退したいと思いました。
背中をおしてくれた一言…
私が
オレも自信ない、キャプテンに変えてくれ__
そう口を開こうとしたときです。
キャプテンはニヤッと笑って
なんと端にポツンと座っていた
あの彼女に聞いたのです。
「●●は、和田でいいと思うよな?」
聞かれた彼女はびっくりしましたが、
やがて私の方を向いてこう返しました。
「大丈夫です。光太先輩は強いもん」
私は言葉がありませんでした。
彼女が眩しすぎました。
愛しすぎました。
イヤなど言えるはずがありませんでした。
そして、勝つしかありませんでした。
そして最終日最終試合、
私は優勝の命運を背負って、コートに立っていました。
逃げる自分への決別へ_
彼女が見守る中、運命の一戦!
観客は彼女だけでした。
他のチームメンバーもいませんでした。
しかしそれは私には関係ありませんでした。
それだけ集中していたのです。
私の前にはボール、ラケット、コート、
そして対戦相手の彼の姿だけが映っていました。
前試合で見せた緊張感は消え去っていました。
彼女が見せてくれた全幅の信頼、
その力が私に安心感を与えてくれました。
今まで試合に見に来てくれた他の後輩女子はいませんでした。
しかし彼女はいました。
私にはそれだけで十分だったのです。
彼女のために__。
試合はスピーディーに進みました。
互角に進みました。
彼は驚いているようでした。
同時に楽しんでいるようでもありました。
「やっぱり和田はオレのライバルだな」
そんなことをコートチェンジの際、
つぶやいていました。
ベンチにいる彼女とすれ違う際、
「私が推薦したんだから、大丈夫ですよ!」
と言われました。
絶対に負ける訳にはいかない、と思いました。
彼女のためにも、負けるわけにはいきませんでした。
劣勢、みなぎる決意
しかし試合は終盤に差し掛かり、
私は劣勢に追い込まれました。
彼が強烈なショットを放ち、
私の疲労が蓄積されてきたのです。
そのうちにギャラリーも集まってきました。
同時進行で行っている試合が終わって
集まってきているようでした。
おもったより善戦している私を見て
驚いているようでした。
真剣な眼をしたキャプテンがいました。
驚いているチームの皆がいました。
相手チームもいました。
前日試合した自称イケメンもいました。
そして心配そうに見ている彼女もいました。
前日の試合のように
たくさんのギャラリーに囲まれることになりました。
私はこれはチャンスだと思いました。
逃げてばかりいた、自分を変えるチャンスだと。
元々この試合も彼が恐くて変えてもらおうとしました。
しかし彼女の視線を受け止め、
彼と戦うことにしました。
そして昨日は緊張し、ミスばかりした
たくさんの観衆の前での決戦__。
辛かった過去を乗り越える
そのための闘いだと思いました。
甘えん坊だった時代を思い出しました。
両親の離婚、いじける自分を思い出しました。
「たれぱんだ」の彼女、中村君を思い出しました。
逃げてばかりいた自分の過去を思い出しました。
ここで、彼に勝利し、
君のお陰で勝てた、過去を決別できた、
そう彼女に言って告白しよう__
そう、決意しました。
私は劣勢を巻き返していきました。
面白いように私のサーブは決まっていきました。
リターンの読みが当たり、
彼のサービスゲームをブレイクしました。
ギャラリーはどよめきました。
合宿の最後に熱烈な一戦、
彼らも興奮していました。
キャプテンも叫んでいました。
いけ!和田!
と。
そしてついに私の
マッチポイント(王手)まできました。
私は勝利を確信しました。
勝敗、そして__。
しかし、その時私は見ました。
彼女の方を。
見てしまったのです。
勝利を確信し、
その後の告白の想像をした時、
つい彼女の事を考え、
彼女の事を見たくなってしまったのです。
そして見てしまったのです。
彼女が他の男子部員と仲良くしているところを。
彼女は赤くなって他の男子部員と談笑していました。
私には背を向けていました。
談笑している彼は私が以前から
彼女と仲良いな、と思っていた子でした。
ゆらぐ信頼__
私は動揺しました。
最後に
彼女の信頼している眼差しを
受けて勇気とパワーを貰おう
と考えていた目論見は失敗しました。
集中しきれないまま、
サーブをはなちました。
ネットにかかりました。
次もネットにかかりました。
私はダブルフォルトをしてしまいました。
明らかに動揺し、おかしくなった私に
観客はヤジをとばしました。
私はマズイ、と思いました。
対戦相手の彼はそのスキを逃しませんでした。
結局、そのまま呆気なく
私は負けてしまいました。
責められる彼女、逃げる自分
「誰だよ、光太先輩で良いって言ったのはよ」
試合後、自チームの反省会で、
そのような声が飛びました。
彼女は小さくなっていました。
私は何も言えませんでした。
彼女は他の女子たちからも
ネチネチ光太先輩なんか推すから、
と責められていました。
私は見ていられませんでした。
敗北…逃走…
そして、本当に情けないことですが
また、逃げたのです。
反省会からも逃げました。
そして、その後合宿終わるまで
彼女と話すことはありませんでした。
彼女とはそれっきり
あまり会う機会がありませんでした。
テニス部は基本男女別の曜日に練習していたため
あり得ることでした。
そのまま私は3年生にあがりました。
そしてひょんなことから彼女と接する機会を得たのです。
体育祭、天国と地獄
私の高校の体育祭は派手でした。
クラス分かれての縦割りで3つの団に分かれ、
優勝を競いました。
細かい説明は省きますが、
そこで私のクラスと彼女のクラスは同じ
団になりました。
そして同じ装飾班になってしまったのです。
これは私にとっては当然嬉しいことでした。
しかし、同時に私は恐怖も感じていました。
この班には当然私のクラスの他の級友などがいました。
部活以外の私を彼女に見せるのが恐かったのです。
友だちがいない自分は
とても見せられませんでした。
彼女は私と一緒の班で喜んでくれました。
最初の集会の時に
一緒にがんばりましょうね!
と話しかけてきてくれました。
しかし、私は恐かったのです。
周りの目を気にしていました。
装飾の作業中などは、当然みんな私語もします。
おしゃべりもします。
他のクラスの男子などは気軽に女子達などと
どつきあったり、からかいあったり、
楽しくおしゃべりをしていました。
私はむっつりひとりで仕事をしていました。
彼女は友達と談笑しながら
不思議なように私を見ていました。
はじめは話しかけてきてくれましたが
段々と他の男子たちの方と話し始めました。
私はひとりでいたのだから当然です。
それでも気を遣ってか、
私にも話を振ってきたりしてくれました。
彼女は強く優しかった、
そして私はもろく臆病だった。
私は本当に辛かったのです。
やがて班の活動にいかなくなりました。
サボりだしたのです。
また、逃げたのです。
彼女の顔が浮かびました。
でも、私の足は集会室に向かいませんでした。
ひとり家に帰り、
ずっと彼女ことだけを考えていました。
特にサボっても、文句は言われませんでした。
私など特にいてもいなくてもかわらない、
という感じでした。
私が自分の殻に閉じこもっている間に、
体育祭は終わりました。
遠目から見る班のみんなは、
青春で清々しく、爽やかに肩を抱き合っていました。
彼女もいました。
私のことなどまるで忘れたかのように、
みんなと一緒になってはしゃいでいました。
私は、泣きました。
自分の弱さに。
ひとりぼっちの卒業式…
普通卒業式の後は、
みんなで寄せ書きをかいたり、
先生たちにお礼を言いに言ったり、
後輩たちと写真をとったり、
色々と忙しいものなのでしょう。
しかし私はヒマでした。
私は友人がいなかったので
みんなの感動の輪に入れず、
ひとりポツンとしていました。
誰ひとりとして帰ろうとしないし、
私は卒業証書を手にしたまま、
動けずにいました。
帰りたい、
と思いました。
でも、本当は名残惜しかったのです。
誰か仲間に入れてほしかったのです。
でもクラスの連中は
このあと打ち上げいこうぜ!
と盛り上がってどこかへ行ってしまいました。
先生方もあまりハメを外すなよー
とからかっていました。
私は廊下を通って帰ろうとしました。
少し泣いていたかもしれません。
卒業を祝える友がいないので
逃げるように下校…
何人かの同級生や先生と目が合いました。
しかし皆、私をみると視線をサッと外しました。
私は校門へいきました。
これで最後、最後の日。
もうこの「女子校」へは戻ってこない。
悔いはないのか?
やり残したことは?
ない、、、とは言えない。
でも、もういいんだ。
そんな問答を頭の中で繰り返していました。
だからその光景をみたときはびっくりしました。
彼女が、校門の前にいたのです。
数人の友人たちと一緒に。
私はマズイ、と思いました。
卒業式の日に、孤独に、
一人寂しく帰る姿を見られたくなかったのです。
彼女は友人たちと談笑していて
こちらに気づいた様子はありませんでした。
私は急いで踵をかえしました。
校内に戻りました。
行くあてなどありませんでしたが、
とにかく彼女に見つかるわけには行かなかったのです。
何処かに隠れていよう、そう思ったときでした。
後ろから思いがけない声が聞こえました。
「また、逃げるんですか?」
彼女でした。